エリカ「? どうしたの対馬クン血相変えて」

レオ「ここにいるのは姫だけ?」

エリカ「見ての通りね」

 他は誰もいない。

 よし、こいつはチャンスだ。

 飾りなんていらない。

 ありのままの気持ちで、充分だ。

 ガチリ、と生徒会室に鍵をかけた。

エリカ「ちょっと……なんで鍵をかけるのよ」

レオ「2人きりで正直な話をしたいからだ」

エリカ「正直って?」

レオ「まず俺から言おう」

 勝負!

 ズカズカと姫に近寄る。

エリカ「ちょっと、何なのよ?」

レオ「俺は姫が、好きだ!」

エリカ「うん。それ前に聴いたよ。で、終わったでしょ?
    記憶がなくなっちゃったの?」


 姫はあくまで冷静だ。

レオ「あれは姫の一方的な意見だ」

レオ「俺は納得してない」


エリカ「納得してないも何も、恋愛なんて片一方の
    気持ちが冷めたらそれで終わりでしょうが。
    ウザい事言わないでくれない?」


レオ「姫は冷めたなんて言ってない」

レオ「ただ、覇道の邪魔になる、というのが理由だった」


エリカ「何よりの理由でしょ。私は恋と野心だったら
    野心をとるの」


レオ「いーや」

レオ「俺は姫を信じてる」


エリカ「信じてるって何をよ」

レオ「姫なら両方とれる。だって、姫は欲張りだから」

エリカ「だから、それが難しくなったから片方
    とることにしたんでしょうが」


レオ「姫はそんな器じゃない、両方とれる!」

エリカ「って何よ、その理由でやり直したいなんて
    言うんじゃないでしょうね」


レオ「っていうか、まだ終わってない」

 姫をグッ、と半分押し倒す。

エリカ「な、何よ!」

 こっちから姫を落とすぐらいの気持ちで
いかないとダメだ。

 男なら、普段はゆずっても……例え人生
これから先尻に敷かれ続けようとも……。

 ここだけは譲るな!

レオ「姫との思い出はまだまだこれからなんだ」

エリカ「って何暴走してんのよこのバカ!
    分かる? 対馬クンは私にふられたのよ」

エリカ「それなのにつきまとってくるなんていうのわね!
    ストーカーなんじゃないの?」


レオ「姫は本気で俺のことストーカーだと?」

エリカ「思わないわよ、ただ一般的にそう見えるの!」

レオ「へぇ、姫が一般論を言うんだ」

エリカ「ぐっ……」

レオ「姫、俺は姫が大好きだ」

エリカ「それはもう分かったっての! 身に染みてるわよ」

エリカ「私はね、それを承知の上で対馬クンを
    フッたのよ。野心の為にね。
    話題のループに気付きなさいよ!」


レオ「本当にそんなんでいいの?」

レオ「1人の男をキープできないようで世界をとると?」


エリカ「むっ……!」

エリカ「……だから、問題は対馬クンが
    キープする価値が無い男ってこと!」

エリカ「言ったでしょ? 対馬クンはこれから私が
    出会うであろう、出世街道のエリート達に
    比べたらきっと色褪せるって」


レオ「あぁ、確かに今の俺はそこまでじゃないよ
   勉強せずに遊んでたりしてたからな」

レオ「でも俺だって素質でそいつらに劣ってるとは
   思えない。今からだって絶対間に合うはずだ
   条件あるなら出してくれ、クリアしてやる」


エリカ「じょ、条件って……」

レオ「俺は本気だ。本気の人間……しかも俺なら
   並大抵の事はやってのけるからな」


エリカ「口だけは随分偉そうじゃない」

レオ「それに、俺はそいつらに1つだけ
   負けないと思うものがある」


エリカ「何よそれ、スケベ心?」

レオ「違う! ……それは」

レオ「姫が好きだというこの気持ちだ!」

レオ「それだけは他人に絶対負けない!」


エリカ「……うぅ? 何でこんなに
    熱くなってるのこの男」


レオ「姫が俺を熱くさせるんだ」

レオ「姫、俺が嫌いか?」


エリカ「嫌いなわけじゃないって言ってるでしょ
    っていうかむしろ好きよ」

エリカ「あっ……う……しまった」

エリカ「で、でも、クラスメートに戻ったんだから!
    そう決めたんだから!」


レオ「じゃあまた交際状態に戻ろう」

エリカ「だぁーっ! なんでそうなんのよ!
    なんのために握った手を振り払ったと思ってるの」


レオ「振り払われたなら、また掴めばいいだけ」

エリカ「それは、しつこい! っていうの、
    余計に嫌われるわよ」


レオ「でも、想いを全部伝えないで後悔するよりいい。
   もう何度でも言うぞ、好きなんだ姫」


エリカ「こ、このバカっ……」

レオ「それは自覚している、でもバカには
   どうしようもないバカと愛しいバカがいて、
   俺は後者だと思う」


エリカ「自分で言うなっつーに!」

レオ「姫……」

レオ「姫のとる世界ってのを俺にも見せてくれ」

レオ「騎士となってどこまでもついていく」

レオ「そういう人間を探しているんだろ?」

レオ「だったら俺をとってくれ」


エリカ「…………はぁ…………」

 姫は大きく溜息をついた。

エリカ「まぁ、なんとも勢い溢れる告白ね」

レオ「とても姫以外の前では言えない」

レオ「多分、年取っても言えないだろうし」


エリカ「……正直に言うとね」

エリカ「私だって、別れてから寂しかったわよ」

エリカ「対馬クンの事ずっと気になってたっての!」

エリカ「で、頑張って元のリズムに直そうと
    してた所にコレでしょ」


レオ「分かってくれた?」

エリカ「分かるわけないでしょ、
    あんな寒い一方的な告白で!」

エリカ「むしろ頭来たんだから!」


レオ「え」

エリカ「男1人とれないで世界はとれない?
    ふん、生意気に痛いとこ突くじゃないの」

エリカ「だったらその両方とってあげようじゃないの
    見てなさいよ!」


レオ「……姫!」

エリカ「ふん、いい気にならないでよね。
    そこまで私にお熱っていうなら
    盾になって死ぬ覚悟してもらうわよ」


レオ「一緒にいられれば、それが俺の幸せだ」

エリカ「……うぅ、ほんと単純バカだったのね」